じん肺とは

 主として小さな土ぼこりや金属の粒などの無機物または鉱物性の粉じんの発生する環境で仕事をしている方が、その粉じんを長い年月にわたって多量に吸い込むことで、肺の組織が線維化し、硬くなって弾力性を失ってしまった病気をじん肺といいます。

 じん肺を発生原因によって分けると以下のようなものがあります。


石炭じん肺

 主として炭鉱で働く労働者が、石炭の粉じんにばく露したためにじん肺となりました。

 

変化
じん肺

 石炭じん肺に罹患した場合、肺は左のように黒く変質します。じん肺患者は、肺の機能が著しく低下し、呼吸器をつけなくては日常生活すら困難となってしまう事例が多数存在します。また、大量のたんが出ることも特色で、たんを喉に詰まらせることがないよう、継続的に吸入を行わなくてはなりません。


アスベストじん肺

アスベスト(石綿)は、「せきめん」「いしわた」とも呼ばれる天然鉱物です。アスベストは、髪の毛5000分の1という極めて細い繊維で、熱・摩擦・酸やアルカリなどの薬品にも強く、丈夫で変化しにくいという特性を持っています。また、安価であることから「奇跡の鉱物」とも言われていました。

 アスベストは、安価であり、耐火性・断熱性・防音性、耐薬品性という性質を持つことから、私たちの生活のあらゆるところで使用されてきました。

 主な用途は、建材製品と石綿工業製品に分けられ、その8割以上は建材製品です。

 アスベスト繊維は極めて細い繊維であることから、飛散する気中に浮遊しやすく、吸入されてヒトの肺胞に沈着しやすい特徴があります。吸い込んだ石綿の一部は痰に混ざって体外へ排出されますが、石綿繊維は丈夫で変化しにくい性質があることから肺の組織内に滞留することになります。この体内に滞留した石綿が要因となって、肺がんや中皮腫などの病気を引き起こすことがあります

 石綿による健康被害は、石綿を吸ってから長い年月を経て出てきます。中皮腫は平均35年という長い潜伏期間の後に発病することが多いとされています。 

アスベストにばく露し健康被害を最も受けたのは建設労働者ですが、家庭内ばく露(石綿工場に働く夫の作業衣を洗濯することによりばく露を受ける妻や、空になった石綿袋を家に持ち帰り、子どもがそれで遊んだりすることによるばく露)、近隣ばく露(石綿鉱山および石綿工場の近隣住民のばく露)が報告されています。


トンネルじん肺

 鉄道や道路のトンネル掘削工事に従事した労働者にも、多数のじん肺が発生しました。


金属じん肺

 金属鉱山で働いていた労働者にも、多数のじん肺が発生しました。